
梅雨入り前のまだ涼しい曇りの日、私たちは特別な一日を迎えました。
お施主様と共に初めての一歩を踏み出す上棟式です。建築の一つの節目として、心が引き締まる思いでした。
朝、現場に集まった職人たちとお施主様をお迎えし、朝礼を行いました。お施主様からご挨拶をいただくと、皆の気持ちが一つにまとまりました。
その後、弊社恒例イベントとして、お施主様に一本目の柱を立てていただきました。この一本の柱が、これから建ち上がる住まいの始まりを告げる。
その瞬間はいつも、家づくりの感動を改めて感じさせてくれる、特別な時間です。

作業をスタートし順調に進んでいましたが、突然、空からポツリと雨粒が落ちてきました。
しかし、幸いにも長続きせず、作業に大きな影響はなく進めることができました。
それでも職人たちは、雨が止むように願いながら手を動かし続けました。

そして、この日の上棟式をさらに特別なものにしたのが、「餅まき」です。
近年ではコロナ禍を経て、こうした伝統的な行事を目にする機会はめっきり減ってしまいました。
しかし、お施主様は「これからお世話になる地元の皆様に、工事期間中のご挨拶と感謝の気持ちを伝えたい」という強い想いをお持ちでした。


事前に工事看板には餅まきの告知を掲載し、お施主様もご近所の方々へお声がけをされていたとのこと。すると、その効果は想像をはるかに超えるものでした。
餅まきの時間が近づくにつれ、どこからともなく、老若男女、本当にたくさんの方が現場周辺に集まってこられたのです。
小さなお子さんからご年配の方まで、笑顔で溢れるその光景は、圧巻の一言。

これまで数多くの上棟式に立ち会ってきましたが、弊社の餅まきの中でも、これほど多くの方がお集まりくださったことはそうそうありません。
用意された投げ餅は、合計3.5俵分。1俵が約60kg、投げ餅にすると約1,500個に相当しますので、ざっと計算しても約5,000個という途方もない量です。
参加者の皆様は、飛び交う餅やお菓子を一生懸命に拾い、大きな笑顔を浮かべていました。
その様子を見たお施主様も、「やってよかった」と大満足の表情を見せてくださいました。
地域の方々と関わるこのような瞬間が、家づくりという仕事の醍醐味であると感じます。
上棟式を無事に終え、人々が現場を後にした頃、再び雨が降り始めました。
私は一人、雨の中で心を落ち着けながら、大成功に終わった上棟式への安堵と、この素晴らしいお客様の住まいを完成させるという重い責任感を感じていました。
これから完成まで持てる力全てを発揮し、お客様にとって最高の「価値ある住まい」を創造することにスタッフ一同、取り組んでまいります。